蜂蜜閣下のお誕生日
誰にだってすてきな日 一年に一回すてきな日
それは それは それはね お誕生日
ローソク立てましょ Happy Birthday yeah!
みんなが持ってるすてきな日
今日は ファーターの お誕生日 |
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「ねえ。来月はウォルフのお誕生日よね」
ベッドの中で、フレイアがささやく。
「うん、そういえばそうだ」
フェリックスが同意するように言う。
「今年のプレゼントはなんにしましょう?」
「・・・ぼくたちの結婚が、一番のプレゼントじゃ?」
「そうかしら?」
フレイアは小さく笑う。
「なんだよ、その笑い」
「わたし、まだ大学を卒業したばっかりよ。どうせそのうち結婚するんだから、もう少しいいじゃない」
「まあ、それもそうだけど・・・」
フレイアはこの7月、めでたく大学を卒業した。本人は
「ウォルフガング・ミッターマイヤーの主席秘書官になるの」
と公言してはばからない。
しかし。
「公私混同と言われないかな?」
ミッターマイヤーはそう考えている。
政治家としての自分のあとなど、誰も継がなくてもいい。
大体、こんなに自分に似合わないことを、と思いつついつも政務に励んできた。
もっとふさわしい人物もたくさんいるのだ。
そろそろ自分の荷を下ろしてもいい、とすら考えている。
そんな引退間近の人物の秘書になったからといって、なんのメリットがあるというのだ?
・・・だからといって、では、フレイアの進む道は?
ミッターマイヤー自身は、月並みだが、自分の娘には平凡な結婚をしてほしい、
そしてよき妻、よき母になってほしいと思ってきた。
彼の末娘はさておき、長女はその枠には収まりそうもない娘であることはよくわかっているのだが。
それはさておき。
「いいことを考えたわ」
フレイアは身体を起こす。
その拍子に身体を隠していたシーツがはらりと落ち、裸の胸があらわになる。
フェルは思わず目を伏せる・・・頬が赤くなる。
フレイアがそれを見て笑う。
「どうしたのよ、今更。いつも見てるでしょう?」
「う、うん・・・」
「なに恥ずかしがってるのよ」
「・・・別に」
そう言いながら、フェルは目をそらす。すねたような口調がかわいい。
フレイアはつい笑ってしまう。
「・・・で、いいこと、って?」
フェルがすねたような口調で聞く。
「ウォルフのお誕生日のプレゼントよ。いいものがあるわ」
「なんだい?」
フレイアは一呼吸置いて、フェルの耳元でささやく。
「孫」
「・・・へ?」
フェルは自分でも驚くような、素っ頓狂な声を出す。
「聞こえなかった?あなたとわたしの子ども」
「フ、フ、フ、フ・・・・・・」
フェリックスは、呼吸困難になったようにあえぐ。
「どうしたの?」
「フレイア!!ぼくたちはまだ・・・」
「そんなの小さいことじゃない」
「ち、小さいって・・・」
「双璧の血をひく子どもよ」
「・・・」
「きっとウォルフ、喜ぶわよ」
「よ・・・喜ばない!!」
「そうかしら?」
「まだ結婚もしてないのに・・・」
「そんなの関係ないと思うけれど」
「関係あるよ!」
フェリックスは大きな声を出す。
「あら、そんな大きな声を出したらみんな起きてくるわよ」
「・・・」
「あのね、自宅で自分の娘とその恋人が堂々とこう言うことをしているのを認めてるのよ、
ウォルフガング・ミッターマイヤーは」
「う、うん・・・」
「だったらもしかしたらそう言うこともあり得ると、きっと思ってるわよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・あなたがいやなら、他の人に頼もうかしら?」
「フ・・・!!」
「冗談よ。おもしろいわね、あなた。赤くなったり、青くなったり」
「・・・・・・」
フェリックスは、もうなにも言えない。
結局その日は、誕生日のプレゼントをなににするかは決まらなかった。
「いいアイデアだと思ったのになぁ・・・」
フレイアのそのつぶやきを、フェリックスは聞こえなかったことにした。 |