それぞれの決意と・・・ Mittermeire  side〜


※この話は鏡さんのサイトに置かれている「それぞれの決意と・・・」のミッターマイヤーサイドのバージョンです。
鏡さんとチャットで話していて、「書いてみては?」というお話になり、書かせて頂きました。
元になった文はこちらでお読みください 鏡さんのサイトはこちらから HP

このような機会を与えてくださいました鏡さん!ありがとうございましたm(__)m


病室を訪ねると、ミュラーは眠っていた。
ミッターマイヤーは病室の壁に立てかけてあった折りたたみ椅子を立てると、ミュラーの枕元に座った。
ミュラーの額には汗が流れ、砂色の髪が額に張り付いていた。
傷が痛むのだろうか?
それとも、何か悪い夢でも見ているだろうか?

ミッターマイヤーは、ミュラーの額の汗をそっとふいてやる。

すると、ミュラーは急に、ミッターマイヤーのその手を払いのける。

「・・・おい、ミュラー・・・大丈夫か?」
ミッターマイヤーはミュラーを見やる。

ミュラーはうなされている。
熱にうなされたように、ケンプの名を呼ぶ。

ミッターマイヤーは瞬時に理解する。
(ミュラーはガイエスブルグの夢を見ている・・・)

それは、宇宙で死闘を繰り広げたものの、共通の悪夢。
死と隣り合わせの時間を持った者の宿命か。
ミッターマイヤーでさえ、宇宙での戦闘のあとは悪夢にうなされる。

目の前でケンプを失い、おそらく自責の念に駆られているであろうミュラーだ。
しかも、その精神力で、残存兵力を秩序を持って撤退させた。
その疲労と、心の傷はいいようのないものであろう・・・。

悪夢ならば、見ない方がいいに決まっている・・・。

ミッターマイヤーは、ミュラーを激しく揺する。
「おい。・・・おい、ミュラー!!」
ミュラーはその声に、目を開け・・・そして、息をつく。
ミッターマイヤーは、そんなミュラーをいたわるように、努めて優しい声で言う。
「大丈夫か。凄い汗だ」
そして、ミッターマイヤーはミュラーの体をタオルで拭く。
「大丈夫です・・・。ずっとそこにいてくださったのですか・・・」
ミュラーはゆっくりと体を起こす。
まだ少し眩暈がするようだ。
いつもの覇気がそこにはない。
・・・怪我のせいだけではあるまい。
「無理をするな。お前は疲れているんだ・・・」
「私は生きている資格などありません・・・。多くの将兵を無駄死にさせ、ケンプ提督を救う事もできず・・・。私は死んでしまいたい・・・」
ミュラーの目から涙がこぼれ、頬に線を描く。
手は強く握られ、体は少し震えている。
「ミュラー・・・」
そんなミュラーをミッターマイヤーはただ見つめる事しか出来ない・・・。
(今、下手に慰めたって逆効果だ・・・)

「私は・・・もう少し力があればケンプ提督を救い、もっと多くの将兵を救う事ができたでしょうか・・・」
「もういい・・・ミュラー・・・。お前はよく頑張った。生き残った将兵をまとめ故郷に連れて帰った。それでいいじゃないか。もう十分だろう・・・。」
ミッターマイヤーはミュラーの強く握られた手に自分の手を重ねた。
「うっ・・・うううっ・・・」
既にミュラーの目からは涙が溢れていた・・・

人間の能力には限度がある。それは分かっていた。
しかし・・・。

そんなことを考えているとミュラーがミッターマイヤーの胸に顔をうずめた。
腕の中のミュラーは震えていた。その姿はあまりに幼く見えた。

「ミュラー・・・」
ミッターマイヤーはミュラーの頬に触れる。
ミュラーは、少し驚いたようにミッターマイヤーの顔を見つめる。

グレーの視線と、砂色の視線が交差する。

やがて、砂色の瞳が静かに閉じられる。
ミッターマイヤーは少しためらい、そして、ミュラーに口づける。

(なんだか、ロイエンタールみたいなことをしているな・・・どうしたんだ?おれは)
そんな考えが、ミッターマイヤーの脳裏をよぎる。

自分が悪夢を見たとき、うなされていたとき、そばにいてくれるロイエンタール。
そっとキスをし、抱きしめてくれる、ロイエンタール。

自分がこんなことをしたら、ミュラーはどう思うだろうか?
しかし。今のミュラーは、まるで、小さな子どものようだ。
・・・ほおっておけなかった。

ミッターマイヤーはミュラーの背中を優しく撫でる。
まるで母親が子供をあやすように・・・。

「・・・すまない」
やがて、ミッターマイヤーは、ミュラーの身体を離してささやく。
「いえ、いいんです・・・わたしこそ、みっともないところを見せてしまいましたね」
「いや、いいんだ・・・。誰だって泣きたい時はある」
「あなたは優しいですね・・・」
「そんなことはないさ・・・」
そういってミッターマイヤーは小さく微笑んだ。
「ミュラー・・・。ケンプはもうカイザーをお守りする事は出来ない。
しかし、お前はできる。ケンプの分まで頑張るんだぞ」
「はい・・・」
そう小さくつぶやいたミュラーは深い眠りにはいり始めた・・・。

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・・・はい、みつえのいいわけです(笑)
お約束の「それぞれの決意と」裏バージョンです。
ミッターマイヤーのサイドから見て書いてみました。
本質的には変わってないと思うけれど・・・。

今回はミュラー君が怪我をしているので、キスどまりです。
次回に期待ヘ(__ヘ)☆\(^^;)