Mine Father  ボクのお父さん

3年B組 ヨハネス・ミッターマイヤー

ボクのお父さんはえらい人らしいです。
「国務尚書」というお仕事をしています。
国の大切なことを皇帝陛下の代わりにいろいろと決めているそうです。
ボクは、すごいなあ、と思います。

皇帝陛下はボクよりも一つしかちがわないのに、国で一番えらいのだそうです。
すごいと思います。
でも、まだ小さいので、
皇帝陛下のお母さんとボクのお父さんとで助けてあげるのだ、
とおかあさんが話してくれました。

おうちにいるときのお父さんは、でも、
そんなえらい人には見えません。
ソファーにすわって、お母さんが入れたコーヒーをおいしそうに飲んでいます。
お母さんに言わせると、
お父さんはいつまでも子どものような人だ、というのです。
ボクにはそうは見えないけれど、
きっとお母さんにはそう見えるのでしょう。

お父さんとお母さんは、ボクたちの前でもよくキスをします。
フェリックスお兄ちゃんに言わせると、
こんなにキスばかりする大人はめずらしいのだそうです。
でも、仲がいいのはいいことだと思います。

お父さんはボクたちにもよくキスをしてくれます。
お父さんのキスはくすぐったいけれど、
何となく好きです。

ボクが家に帰ったときにお父さんがいることは本当に少ないです。
お父さんは、本当に忙しいです。
帰ってきたかと思うと、すぐに誰かがおうちに来ます。
オレンジの髪のビッテンフェルト提督や、
砂みたいな色の髪のミュラー提督や、
ハンスのお父さん、バイエルライン提督がよく来ます。
そんなとき、お父さんは
ワインを飲みながら、仕事の話をしています。
おうちに帰っても仕事をしなければならないお父さんも
たいへんだなあ、と思います。
大人なのに、宿題がたくさんあるんだね、とお父さんに言うと、
お父さんは笑って
大人だからたくさんあるんだよ、と言います。

でも、ボクは知っています。
夜中、目を覚ますと、
お父さんが泣いているときがあります。
ボクやフレイアのように泣きじゃくるのではなく、
上を向いて、
静かに泣いています。
そんなとき、お母さんが
優しくお父さんを抱きしめています。
すると、お父さんは
安心したような顔をして眠るのです。

ボクとフレイアでお母さんに聞いたことがあります。
「どうしてお父さんは大人なのに、子どもみたいに泣くの?」
するとお母さんはこう言います。
「お父さんはね、昔、たくさんの人を戦場で死なせてしまったの。
一番大切な人も死なせてしまったの。
そして、そのときのことがいつまでも忘れられないの。
だから、今でも苦しくて、泣いてしまうのよ」
「大人はみんなそうなの?」
「ううん、お父さんは優しいのよ。優しすぎるの」
・・・大人って、優しいと、いつまでもいやなことを忘れられないのでしょうか?

お父さんは、ボクたちの前では泣きません。
きっとお母さんのそばだから泣くのでしょう。

ボクは大きくなったら、
お父さんの艦と同じ名前の艦に乗れるような
軍人になります。
そして、一番大切な人を
死なせずにすむような宇宙にしたいと思います。


BGM:「子どもの情景」第1曲(シューマン)

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あとがき

自分で自分に課した1000番キリリクです。
とりとめのない文章になりました。