(1) 〜少〜しシリアスにした方がいいのか?〜
さて。お試し保育の1週間が終わり、双子は 「入園を心からお待ちしております」 というお墨付きをいただいた。 明日はいよいよ入園式。 保育園の優しい先生の様子を聞くたびに、 双子よりも2つ上のフェリックスはぷぅ!とほっぺたをふくらませる。 「ヨハネスもフレイアもいいなぁ。ボクも行きたい」 「フェリックスはだめだよ」 ミッターマイヤーは笑いながら言う。 「どうしてさ〜」 「大人の配慮というやつさ」 フェリックスは5歳になるが、保育園にも幼稚園にも行かず、 家庭教師について勉強している。 家庭教師のフラウ・ハイディ・ルッシに言わせると 「とても賢いお子様です。いつ小学校に上がられても大丈夫ですよ」 ということなのだが、ミッターマイヤーはしばらく家庭教師につかせようと思っている。 いわゆる大人の配慮だ。 自分がこの問題に対しては少々ナーバスになっていることを ミッターマイヤーは自覚している。 もう少し、フェリックスの判断力がつくまで、 よけいな雑音を聞かせたくない、というのが本音だ。 かわいい、無邪気な「お友だち」が、もしも目の前で 『第2次ランテマリオ会戦ごっこ』でもしようものなら大変だ。 善良な、しかし、口うるさい、うわさ話好きの 『お母様方』のことも心配だし。 (こっちはエヴァへの配慮もある) だから少なくとも小学校入学までは 家庭教師と学ばせたい、そう思っている。 「フェルもにゅうえんしき、くるのよね?」 フレイアは大好きなフェルにも来てもらいたいらしい。 にこにこと誘っている。 「行きたいな!」 フェルが目を輝かせて叫ぶ。 まずいな、とミッターマイヤーは思う。 何も考えていないようで実はしっかり考えている(失礼!)ミッターマイヤーは、 子どもの入園式も立派な政治ショーになりうることを知っていた。 ロイエンタールの遺児の存在は立派なスキャンダルになりうる。 心ないことをフェルに対して言う輩も出てくるかもしれない。 テロの危険もある。 そんなところにフェリックスを連れて行くわけにはいかないではないか。 ・・・帝国の重臣中、暗殺のターゲットになる危険性ナンバーワンのくせに 毎日徒歩での保育園への送り迎えを欠かさず行い、 警備関係者ととビューローとケスラーと保育園関係者の寿命を10年ほど縮めたことは もちろんアウト・オブ・眼中のミッターマイヤーである(^◇^;) 「・・・それでは、明日朝からおれが迎えにくる」 オレンジ色の髪の提督が画面の向こう側で笑っている。 「すまないな、ビッテンフェルト」 「いいっていいって。おれはあいつが気に入ってるんだ」 明日はどうやら、ビッテンフェルトがフェルの相手をすることに決まったらしい。 「おれに任せておけ。遊園地でも、映画でも、どこにでも連れて行ってやる」 ビッテンフェルトと遊園地・・・考えたくないが、意外とよく似合う取り合わせだ。 「・・・・・・で、卿は入園式には何を着ていくつもりだ?」 前回のペアルックのことが頭に少々残っているビッテンフェルトが、こわごわ聞く。 ミッターマイヤーはビッテンフェルトの考えていることを察したらしい。 苦笑しながら応える。 「わかってるだろ?一張羅のスーツだ」 「・・・似合わないぞ」 「自分でも自覚してるよ、それは」 職務上、スーツばかり10着近く作る羽目になり、 一度に衣装持ちになってしまった3年前。 未だにスーツは自分には似合わないと思う。 しかし、前王朝時代の礼服はもっと似合わないと思う。 だから、旧同盟の政治家達に習って、公式の場ではスーツで通す。 小柄なくせにがっしりとしているので、全部オーダーメイドになってしまった。 (軍人時代よりも痩せたんだがなぁ・・・) 軍人の時は、服装に気を遣うことはなかった。 公式の場では、いつも軍服だった。 今回も本当なら軍服が気が楽なのだが、それは退役した自分にはもう不可能だ。 そして、次の日。 フレイアは新調したピンクのワンピースがお気に入りだ。 入園式は、もちろんそのワンピースで参加する。 「ファーター、ムッター、見て」 そう言うと、すそを両手で持ってくるくると回ってみせる。 ミッターマイヤーが抱き上げて、頬にキスをする。 「目が回らなかったか?お嬢様」 「だいじょうぶ」 そう言うと、ひょいとミッターマイヤーの腕からすり抜ける。 「どこに行くんだ?」 「お部屋よ!」 そう言うと、とんとんと階段を登っていく。 「フレイアは鏡で自分の姿を見るのが好きなんですよ」 エヴァはそう言うと、愛する夫のコーヒーをつぐ。 ミッターマイヤーの膝には、今度はヨハネスがまとわりついている。 「ヨハネスも似合うぞ、もうすっかりジェントルマンだな」 小さいながら、きちっとネクタイを締めたスーツ姿のヨハネスは嬉しそうだ。 入園式も、一種の政治的ショーかもしれない。 自宅の前に並ぶ報道陣を見て、ミッターマイヤーはふと思う。 彼らにしてみれば、マスコミに出ることを好まないエヴァの映像を撮るいい機会なのだ。 もちろん、安全上とプライバシー保護の観点から 子どもたちの映像は撮らないように申し合わせができている。 バイエルラインが息子と一緒に待っている。 さすがに、今日は青二才バイエルラインもスーツ姿だ。 クリーム色のスーツを着た奥方が、軽く頭を下げる。 「フラウ・ミッターマイヤー、お久しぶりです。いつも主人がお世話になっています」 「こちらこそバイエルライン閣下にはいつも主人を支えていただいて、感謝しておりますのよ」 ふたりの奥方をフラッシュが包む。 |
※さあ、入園です。父親ミッちゃんは今のところおとなしいけれど、このままいくのか??
みつえ、実はちょっと仕事モードに入っているので、少しシリアスになりました。
おまけに長くなるかも・・・まだ保育園に着いてないもの(^◇^;)