夢よ、もう一度・・・(^^ゞ

(2)

全く馬券を買ったことのないビッテンフェルトにはそれなりの演習が必要だ。
そう考えたミッターマイヤーは、ビッテンフェルトと共に場外馬券売り場におもむいていた。

「ここはどこだ?」
あまりの人混みに、ビッテンフェルトが驚いている。
「ここは競馬場に行けなくても馬券が買える場所だ。まずはここで少し予習をしていこう」
ミッターマイヤーが笑顔で言う。ビッテンフェルトはただただ驚いている。
「あ、ああ・・・しかし、すごい人手だな」
「G1の前の日だからな。今日買っておこうというファンが多いんだ。
それに、今日も競馬は開催されているんだ」
「毎日やっているのか?」
「いや、土曜日と日曜日の週2日開催だ」
(帝国にも土曜日・日曜日があるか、と言う疑問はこの際置いておいてください。
日本の競馬のシステムを参考にしていますので、ご容赦をm(__)m・・・)
そう言ってミッターマイヤーが差し出したのは一枚の紙だ。
何か、カプセルのような模様がたくさんついている。
「なつかしいな。これはマークシートだな、士官学校の試験の時にぬったことがある」
ビッテンフェルトが言う。
「そうか、これはやったことがあったな。これで馬券を買うんだ」
「そうか。ぬればいいんだな・・・しかし、馬券の種類がわからん」
「じゃあ、それから説明しよう」
そしてミッターマイヤー先生の馬券購入教室が始まる。

「一番簡単なのは一着になる馬を当てる馬券だ。これを単勝と言う」
「うん、わかりやすいな」
「うん、わかりやすい・・・しかし、配当もあまり大きくない」
「そうか」
「次にその馬が3着に入るかどうかを当てる。これを複勝という。
あまり配当は大きくないが、初心者には買いやすいと思うぞ」
「ふむふむ」
「・・・次に、1着2着に来る馬を順番に関係なく2頭当てる。これが馬番連勝だ。
ワーレンやルッツがよく買っているのがこれだ。
これを馬じゃなくて馬が入っている枠順で当てるやつを枠番連勝と言って・・・」
「・・・・・・お、おい。頭がこんがらがってきた。
そういうのはどうでもいいから、例の400万はどうやったらいいんだ?」
「あ、あれはな、3単連という。1着2着3着の馬を3頭、順番通り当てるんだ」
「よし!それを買うぞ」
「あ、あのな、ビッテンフェルト・・・それはここでは買えん」
「なにぃ!!」
「・・・そう大きな声を出すな」
「なぜだぁ?」
ミッターマイヤーは説明する。
競馬には帝国中央競馬会が運営するいわば「中央競馬」と、都市都市で開催する「地方競馬」がある。
くだんの400万馬券はその中でも地方競馬でしか買えない馬券なのだ。
「・・・で、ここは中央競馬の馬券売り場だ」
「・・・そうなのか」
ビッテンフェルトは残念そうにうめく。ミッターマイヤーが慰めるように言う。
「まあまあ、中央でもよく万馬券が出る。先日もミュラーが万馬券を当てたではないか。」
「そうだな、まずはここで練習して400万馬券にチャレンジと行くか」
立ち直りの早いビッテンフェルトだった。

ミッターマイヤーのアドバイスに従って馬を選び、馬券を買う。
その繰り返しでその日の全レース分である12レースを買って、
まあまあの収益を上げたビッテンフェルトは満足だった。
「・・・さあ、これで予習は終わりだ。あしたはG1だ。楽しもうではないか」
ミッターマイヤーはビッテンフェルトの肩をたたく。
「明日の分はここで買えるのか?」
「ああ、しかし、実際に馬の様子を見て買った方が楽しみが増す」
「そうだな・・・では、明日を楽しみにするか」
「ああ、いつものようにな」


そのころ、フェザーン経由で自由惑星同盟から、一人の馬主とその多大勢の野次馬が
オーディンにおもむいていた。

「こういうのはあまり好きではないな・・・」
そう言うと、黒髪の学者風の男が髪をぐるぐるとかき回した。
その横のそばかすが印象的な若者が、なだめるように言った。
「いいじゃないですか。たまには。かりそめの平和を楽しみましょう」
「賭け事はあまり好きではないんだ」
そう言うと、黒髪の学者風の男は、ため息をついた。
全く、こんな無茶をして、彼の被保護者が聞いたらなんと言うことか・・・。


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そうなんです。「もう一度」と願う『夢』は、実は二つあるんですヽ(*^^*)ノ