First of May

目を閉じたミッターマイヤーの唇に、そっとロイエンタールの唇が触れる。
軽く。
まるで、壊れ物に触れるかのように、優しく。
・・・たったそれだけのことなのに、ミッターマイヤーが小さくふるえている。

「お前、キスは初めてか?」
「は、初めてじゃ、ないけれど・・・」
「本当に?」
「・・・・・・こんなのは、初めてです」
「じゃあ、今までどんなキスをしていたんだ?」
「そりゃあ、頬とか、額とか・・・」
「それはキスとは言わない」
「じゃ、どんなのがキスなんです?今みたいなのですか?」
「いや・・・こういうやつだ」
ロイエンタールはそう言うと、ミッターマイヤーの頬にそっと手をのばす。
反射的にミッターマイヤーは目を閉じる。
ロイエンタールはさっきよりも深いキスを一つ、ミッターマイヤーの唇に落とす。もうひとつ、ふたつ。

ミッターマイヤーの唇は甘く、柔らかい、とロイエンタールは思う。
女性にも、こんなに優しいキスをしたことはなかった。


ミッターマイヤーは、不思議な感触にとらわれていた。
たかが唇に何度か触れられただけなのに。
自分はどうしてこの人にこんなに優しくなれるのだろう?
・・・嫌っていたはずなのに。
男となんか死んでもごめんだ、と思っていたはずなのに。
どうして、自分は抵抗しないのだろう?
きっと、そんなことをしたら、この人は傷ついてしまうだろう。
そんな顔を見たくない。
・・・なぜ、自分はそんなことを考えるんだろう?


「ミッターマイヤー・・・ウォルフ、ウォルフィ」
熱にでもうなされているかのような、ロイエンタールのささやき。
ミッターマイヤーがそれに応えるように、今度は自分から口づける。
ロイエンタールは、驚いたようにミッターマイヤーを見つめる。
「ウォルフ・・・?」
なにも言わずに、ミッターマイヤーはロイエンタールを抱きしめる。

ややあって、ロイエンタールはミッターマイヤーから離れる。
「え?」
「お前、おれに抱かれたいのか?女のように」
「え?い、いいえ・・・」
「なら、これ以上おれにさわるな。なにをするかわからんぞ・・・」
「・・・・・・」
「自信がない。こう言うことは、初めてだ・・・」
ロイエンタールは、そっとミッターマイヤーから身体を離す。
ミッターマイヤーは、そんなロイエンタールの手を取る。
「・・・?なにをする?触れるなと言っただろう?」
なにも言わず、ミッターマイヤーはそのままロイエンタールの手の上に、自分の手を置く。
「やめろ。お前も・・・抱いて欲しいのか?」
「ううん。・・・でも、こうしてほしいんじゃない?」
「ばかなことを」
ロイエンタールが、ミッターマイヤーの手をそっと押しのける。
「え?」
・・・ロイエンタールはなにも言わず、今度は自分でミッターマイヤーの手を取る。
そして、ミッターマイヤーの指に、いとおしげに自分の指を絡めていく。


どのくらい、そうしていただろう。


「あなたは、だれとでもこういうことをするの?」
そう聞くミッターマイヤーに、ロイエンタールは表情も変えずに言う。
「いや・・・」
「みんながあなたのことを、女たらしだって言ってる」
「当たってる」
「誰とでも寝るって。女でも、男でも」
「当たらずとも遠からずだ」
指は、まだからみあったまま。
「・・・しかし、お前にはできない」
「なぜ?」
「してほしいのか?」
「そうじゃないけど・・・」
「抱いてしまったら、お前は消えてしまいそうだ」
「消えてしまう?」
「そばにいてくれ・・・このまま・・・」


絡まった指が、あつい。

BGM:F.Chopin マズルカ op59−1  みつえの大好きな曲です


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はい、裏?です。完全に友情以上の感情がふたりを支配しています。
・・・書いてて、気恥ずかしい(^.^; やってないのにね。
・・・・・・そのうち、本当に裏行くかもしれない。

・・・こりないみつえです。はい、実はもう一つUPしてます。ここからいけます。
見つかるかな?・・・
期間限定で改訂版のみUPします。そのあとは裏で完全版をどうぞ。








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